イエローキャブ
周りに海外留学に行っている友人が多いせいか、女性・男性の両方から
「日本人女性がビッチと思われていて困る」
という声を聞くことが増えた。
私がこの事実を知ったのは大学2年の夏、マルタ島に行ったときのことだ。
現地で知り合った日本人の友達の一人に、アメリカで留学経験のある女の子がいた。
「アメリカでは大学で少しでもヒールのある靴を履いてるだけで”誘ってる”っていう意味になるの。だから毎日Tシャツにジーパンにスニーカーが当たり前。日本人の女は軽いって思われてるから、本当やりにくかった。」
それを聞いて私もマルタでの2週間が少しやりにくくなったのは言うまでもない。
それにしても、アジアでも東アジアでもなく『日本人』と特定されてしまっているのがやるせない。
しかしそれを完全には否定できないことが辛いところだ。
「何か具体的に思い当たる場面があるのか?」
と言われると、それも特に思いつくわけではない。
しかしなんとなくそう言われてしまう部分を想像できるし、実際にあるのだろうとも思ってしまう。
普通の女性にとってそれが「やりにくい」状況であることは明白だ。
しかし有名お悩み解決サイト知○袋で腹をたてているのはなぜか男性方である。
日本人にそんな民族帰属意識があったとは驚きだ。
…そうじゃない。
彼らが怒っているのはそういった日本人女性の「節操のなさ」と「外人好き」だ。
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この間週末の込み合った街の中で
『不倫反対運動』
なるものが行われていて驚いた。
署名活動を行って不倫の”悪”を主張し、撲滅しようという運動。
「不倫で一番苦しむのは子どもたちです!!」
と悲壮な顔つきで声を張る中年男性には一種の切迫感があった。
署名用のボードを手にし、お揃いの色のジャンバーを着た十人前後の人々。
彼らは不倫被害にあった人々なのだろうか。
どちらにせよ、これは問題からの逃避だ。
先日青少年犯罪の最長刑期が延長されたが、これも同じである。
どれだけ周囲が”悪”だと主張しようと、それは抜本的な解決にはならない。
結局は一人一人が
「それをするとこうなるからダメだ、やめよう」
と思っていなければ解決にはならない。
殺人などは幼い頃から”悪”だと教え込まれている。
そして大概の人はそれが絶対的な”悪”だと信じて疑わないし、疑う必要性のある場面にも出くわさない。
しかしそれが一人の”性”の問題になるとどうだろう?
なかなか他人からその価値判断についてを教わる機会は少ないから、自分で納得できる価値観にたどり着かなければならない。
そしてそれに「恋愛」という要素がついてくると、女性にとっては少し事態が複雑になってくる。
少女漫画、女性雑誌、恋愛ドラマ、そのどれをとっても中心となってくるテーマは「恋愛」であり、そのハッピーエンドはきまって「男性から好かれる」ことである。
それも多くの場合一人からではなく、複数の男性から。
そう考えると不倫をする人妻の気持ちも分からないでもない、となってくるのでは…
俗に言う、「女を捨てられない」という状況だ(と思う)。
もちろん不倫というのは自然な文脈から考えれば”悪”だ。
しかし夫と妻、という2人の関係がある中で起こる問題である以上、問題は双方にあるとみて良い。
その”悪”を一方にのみ押し付けて終わるというのは、それこそ「夫と妻」という関係を放棄したことに他ならない(と私は思う)。
まあ私にはまだ分からないこと、見えないことが多いのだが。
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話を日本人女性の問題に戻そう。
前述した通り、「男性から好かれる」ということが女性の幸せである、という主張は様々な方面でなされてきたことで、それが日本人女性の価値観に繋がっていることはまず間違いないと思って良いだろう。
しかしなぜ、海外に出ることでそういった女性の価値観の問題が表面まで浮上してきてしまうのか。
つまり日本人女性がとりわけ外国人男性になびくのはなぜか。
そこには本当に様々な要因があると思う。
(とてつもなく長くなりそうだし、色々と批判を浴びそうなので今回書くのはやめておく)
ただ一つ思うのは、容姿の問題だけではないということだ。
そしてその容姿の問題はほんの小さな点であり、この問題をより根深くしているのは他の点だ。
もちろん「節操のなさ」という部分は女性個々人の”性”に対する価値観の問題であり、これは周囲がどうこうできる問題ではない。
しかしその点はおそらく民族に深い関係はない。
私が言いたいのは、これを”女性側の問題”だけで終わらせるべきではないということだ。
日本人女性がヒールを履き、スカートを短くし、毎日化粧をするのはなぜか。
ただの「外人好き」だったら日本でそんなことをする必要はないはずだ。
本当に「困る」と思うのならば、
ぜひ署名活動以外の抜本的解決策を一緒に探してもらいたいと思う。
追記:呼べば来る、という意味で欧米ではそういった日本人女性をyellow cabと呼ぶこともある。もちろんここには黄色人種差別も含まれているし、日本人に対する差別意識もこの問題の根本にあると思う。